vol.
5
私たち家族について様々な人に紹介してもらうコーナーです。さて、今回はどんな人に紹介していただけるのでしょうか?
和洋さんは一歩先行く農業青年、
玲さんは尊敬すべき女性
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熊本の紹介者
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音楽家
志娥 慶香さん
【和洋さん】
実家が近所で、「近所におもしろい農業青年がいる」と父から教えてもらったのが最初の出会い。それ以来、家族ぐるみでお付き合いさせていただいています。出会った当時は一人黙々と頑張るタイプに見えましたが、奥様・玲さんと出会ってから、今のように社交的で活動的な雰囲気に変貌した気がします(笑)。常識の1歩先を行く農業の形を実践していて、その活躍には感心するばかり。私の楽曲「蘇峰」の名前をつけた商品を作ってくれたりと、嬉しいコラボも実現してくれて嬉しかったです。
【玲さん】
「彼女ができました」と和洋さんの親よりも早く紹介してくれたのが、玲さんとの最初の出会いでした(笑)。私が玲さんの和楽器の兄弟子とコラボしている写真をみたことが、和洋さんに心を開くきっかけになったとか。なんだか私が2人のキューピッドのようで、嬉しいですね。玲さんは農家の嫁、2児の母でもありながら、三味線の演奏家やハンドメイド作家として自分の信念をもって活躍されていて、本当に尊敬します。これからもますますのご活躍を願っています。
音楽の世界へのアプローチは
映画音楽に心酔した子ども時代
エフエム熊本で、午後のまどろみの時間に優しく流れるピアノの音楽を耳にしたことはないでしょうか? 長寿ラジオ番組「朗読 声の贈り物」のテーマ曲を作曲した人こそ、志娥慶香さん。熊本を拠点にピアニスト・音楽家として活躍する女性です。「ハナウタカジツ」がある植木町(熊本市北区)で生まれ育ち、3歳の頃からピアノを習い始めた慶香さん。「小学校2年の時、映画『E.T.』を観て衝撃を受けたんです。夢のような世界で、テーマ曲が頭から離れなくて」。そのときの衝撃が、後の慶香さんの音楽性を支えることになります。その後も吹奏楽部やバンド活動など、常に音楽が近くにある青春時代を送りましたが、大学は経済学部に進学し、一般企業に就職。バンド活動を「趣味」として続けつつも、職を転々としながら人生を模索する日々が続いていました。「悶々とした毎日で、ストレス発散のために音楽をやっている、そんな感じでしたね」。
ある言葉をきっかけに音楽の世界、
そして世界の映画音楽の本場へ!
そんな慶香さんの背中を押したのは、演奏を聴いたあるバンドの人の言葉だったそうです。「『あなたは音楽だけをやったほうがいい』といわれてハッとしました。今まで持てていなかった『踏み出す勇気』を私に与えてくれて。すぐに仕事を辞め、音楽を仕事にする決意をしました」と、この時が自分の「第1の目覚め」だと慶香さんは語ります。27歳での決断でした。そして第2の目覚めは、熊本市の「人づくり基金」でアメリカへ音楽留学に行ったことです。熊本で少しずつ音楽家としての実績を重ねる中で「もっと音楽のアカデミック面を学びたい」と望んで得たチャンス。ふと思い出したのが、子どもの頃に感じた映画音楽への衝撃だったといいます。そこで選んだのがアメリカで映画音楽の最先端にある「バークリー音楽院」でした。「英語も話せなかったのに、よく踏み出せたものだと(笑)。でも、いろんな人との御縁に恵まれてつながったこの夢。本当に私は人に恵まれていると思います」。3年間の留学でハリウッド式映画音楽作曲学科を首席卒業し、その後も奨学金を得てアメリカで学問と音楽活動を続けます。
故郷・熊本を拠点に、
映画音楽の世界を広げる!
最先端の音楽技術や表現方法を学びました。そして、あの「E.T.」の音楽を作曲したジョン・ウィリアムズとの出会いもありました。「本当に夢のような時間を過ごしたアメリカ時代。世界中に友人ができたし、音楽的にも私自身も、世界が大きく広がりました。夢は念じ続ければきっと叶う、そんなことを信じられるようになりました」。
帰国後は熊本を拠点に、さらに精力的に活動しています。CMや自治体などへの楽曲提供や演奏をはじめ、舞台音楽や、世界の短編映画祭でアジア部門グランプリを受賞した短編映画「冬の蝶」などの映画音楽の制作、さらにフィンランドでのコラボレーションパフォーマンスなど、全国や世界を舞台に活躍。2017年には、人気テレビアニメ「宝石の国」の特殊エンディングテーマ曲『liquescimus』も提供。幅広いジャンルで、聴く人の心に染みこむ透き通った音楽の世界を広げています。「これからは映画音楽の世界にもっと入り込んでいきたい。制作活動はもちろん、映画音楽の面白さを伝えられるような存在になれればと思います」。(聞き手/ライター中川千代美)